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普通科系高等学校の再編整備の方向性について

今回の再編整備計画の白紙撤回を求めます

 
大阪市教育委員会会議決定(2017.7.14)に対する見解 ◆はじめに
 去る7月14日、第16回大阪市教育委員会会議が開催され、「普通科系高等学校の再編整備の方向性ついて」とする議案が決定されました。決定された内容は①再編対象校は西高等学校、南高等学校、扇町総合高等学校の3校とすること、②開校時期を平成34(2022)年4月とすること、③開校場所は扇町総合高等学校校地とすること、④学級規模を1学年6級とすることの4点です。
 委員会の審議はわずか10分で終わり、再編整備により9学級360人もの中学生の学ぶ権利を奪うことになるという非常に重要な中身を議論していることが全く感じられないものでした。「府立移管のこともあり、高校教育についてあまり論議してこなかった」(林委員)「残す意味のある学校、横並びでない学校をを」(森末委員)などの発言は、この議案の根拠となる高等学校教育審議会(高教審)第12次答申をしっかり読んだ上でのものなのかと疑わせる内容です。
 高教審の議論をすべて聞いていたはずの山本教育長でさえ「明るく夢のある学校を」などと発言し、教育委員全体が「劣化」していると言わざるを得なくなっています。
 
◆再編整備の根拠となった高教審で論議 されたことは何か?
 再編整備の根拠となる「本市普通科系高等学校のあり方について」(第12次答申)を提出した高教審は、昨年6月28日の教育委員会会議において公設民営の国際バカロレア認定コースを持つ中高一貫校を新たに作ることが決定され、「新たに高校を作るのだから、現存の学校を減らす必要があるのでは」とする森末委員の発言を受ける形で、8月18日に山本教育長から諮問を受け6年ぶりに再開されたものでした。
 高教審は12月26日までに4回の審議会を行いましたが、1回に2時間、わずか8時間の審議で、市教委高校教育課の作成した文書を検討し、文言のどこを修正するかという中身でした。再編統合により高校教育にどのような影響を与えるのか、戦前からの伝統のある学校を統廃合する意味を真剣に検討したものとはとても言えません。
 
◆再編統合よりもやるべきことがある
 今回決定された議案は冒頭に「長期的な少子化の進行により、大阪においては中学校卒業者数はピークであった昭和62年からすでに半数にまで減少しており、今後も増加に転じる見込みは薄いと考えられる」と述べ、再編統合を「正当化」しています。
 しかし、少子化が進行するから高校の数を減らすという政策が大手を振ってまかり通っているのは、大阪府・市くらいではないでしょうか。事実「3年連続定員に満たない高校でその後も改善の見込みがないと認められるものは再編整備の対象」とする府立学校条例は文字通り大阪府にしかありません。
 「少子化」を言うのであれば、1学級の定員を40人から35人にする、1学年の学級数を全国平均並みの6学級(大阪の公立高校・全日制は1学年8学級)にするなど教育条件を整備・拡充することで対応すべきです。
 子どもの数が少なくなるから高校をつぶすという政策は「子どもたちの学ぶ権利を奪う」ことに他なりません。
 
◆再編統合の背景にあるものは何か?
 府教委・市教委は、2013年11月に「2018年度までに府立高校、大阪市立高校あわせて7校程度を募集停止」とする再編整備計画を策定しました。
 府教委は府立学校条例を「金科玉条」にして咲洲高校・池田北高校・泉尾高校・西淀川高校を次々と募集停止し、再編統合を進めていきました。しかし、市教委は橋下市長(当時)が「都構想=大阪市解体」に暴走していたために、独自の再編整備計画を打ち出せませんでした。2015年5月の住民投票で「都構想=大阪市解体」が否決されたことにより、市教委は再編整備の具体策を打ち出さざるを得なくなったと考えられます。
 そうした経過の中で、今話題の国家戦略特区による全国初の公設民営による国際バカロレア認定コースを持つ中高一貫校の設置が認められた教育委員会会議で、設置校数の総数減の話が出されたことで、市教委は再編整備計画を具体化するために高教審を再開させました。
 この動きに深く絡んでくるのが、市内中心部の人口急増問題です。すでに2015年度のはじめには西区堀江中学校が満杯になり、西高校に移転してもらうという話が公然と出てきました。
 そしてこれを裏付けるように「毎日新聞」(2月18日付)は「都心回帰140教室不足」なる見出しの記事を報道しました。内容は以下の通りです。
○大阪市内中心部の3区(北、西、中央)で2022年度、計26小学校で140教室が不足する可能性があると市教委が推計
○高層マンションの建設ラッシュで子育て世帯が増えているためで、児童数が倍増する学校も
○必要な教室数を確保しようと市教委は校舎増築などの対策に躍起。手狭な中心部だけに四苦八苦
○吉村市長は「将来的には市立高校の再編で空いた校舎の活用も含めて考える」と話す
 今回の再編整備計画の対象となる3校がまさに、西区・中央区・北区に立地されていること、新たな普通化系高等学校の開校年度が教室不足になる年度とピタリと一致していることは、「明るく夢のある学校」(山本教育長)を設置することなどではなく、人口急増地域の教室不足を解消するためのものであることが明白となったのです。
  この背景を隠蔽するために、高教審答申は「英語力とICT活用能力」というキーワードを用いています。しかし、3校は「英語力とICT活用能力」でひとくくりにするにはどう考えても無理があります。南の国語科、西の流通経済科、扇町総合の大阪文化系列・環境科学系列・国際観光系列・会計ビジネス系列など、これらの学科や系列を挙げるだけ再編整備の対象にするには別の理由があることが明白です。
 重要なのは扇町総合高校は、現在も大阪市のHP上では普通科に分類されず、今次高教審の中で、普通科系の高校に位置づけられているのです。「いつから普通科系の高校になったの?」という声が扇町総合の関係者から聞かれたのは当然すぎることです。
 
◆最後に
 今回、教育委員会会議で再編整備の対象として決定された西高校(1921年、西区商業学校として開校)・南高校(1937年、南高等女学校として開校)・扇町総合高校(1923年、扇町商業学校として開校)はいずれも創立80年を超える伝統ある学校です。
 これまでに多くの卒業生を送り出し、地域に根ざして社会に貢献してきた高校です。
 高教審では、3校の関係者に「統廃合を納得してもらう」(添田座長)ために、「普通科系高等学校の雄」とか「国際バカロレアに匹敵する魅力を持つ」など、「歯が浮くような」文言を散りばめています。まるで雲を掴むような中身のない言葉は、戦前からの伝統のある学校の関係者からすれば「絵空事」にしか聞こえません。
 市高教は何の道理もない今回の再編整備計画の白紙撤回を求めるとともに、3校の関係者に共同を呼びかけていきます。
 また、60億円もの予算がかけられる国際バカロレア認定コースを持つ中高一貫校を設置するよりも、既存の市立高校の教育条件整備に予算を回すべきです。
 
2017年7月25日 大阪市立高等学校教職員組合