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大阪市高等学校教育審議会答申(2017.1.23)批判

 
♦はじめに 去る1月23 目、大阪市高等学校教育審議会(以下、高教審)は教育委員会に対し、「本市普通科系高等学校のあり方について」(第12次答申)を提出しました。今次の高教審は、昨年6月28日の教育委員会会議において公設民営の国際バカロレア認定コースを持つ中高一貫校を新たに作ることが決定され、「新たに高校を作るのだから、現存の学校を減らす必要があるのでは」とする教育委員の一人の発言により、6 年ぶりに再開されたものです。 8月18日に山本教育長からの諮問を受け、12月26日までに4回の審議会を行い、答申案を検討して提出されたものです。審議会は1回に2時間、わずか8時間の審議にもかかわらず、以下に示す重大な問題点を持つ内容を答申としてまとめています。   ♦事実は正確に示さなければならない 大阪府は「大阪府教育改革プログラム全体計画(1999年版による10カ年計画)」で、公立中学卒業生が今後7万人前後で推移するとして20校を廃校にする再編整備計画を実施してきました。また、大阪市も「大阪市教育改革の基本方向」(2000年8月)、「大阪市教育改革プログラム」(2002年2月)で5校を廃校し2 校を新設しました。その後の府立高等学校再編整備計画(2013年3月)では、今後の府内中卒者数の減少は長期的な動向を見極める必要があるとし、また経済動向により志願者動向の変化予測については慎重に見極める必要があるとしています。 ところが、答申は「はじめに」の部分で「大阪においては、中学校卒業者数はピークであった昭和62年からすでに半数にまで減少しており、今後も増加に転じる見込みは薄いと考えられる」とし、「少子化傾向に歯止めがかからない現状においては、……再編による設置校数の総数減を進めるとともに、……」と再編統合を正当化もしています。 府立高校の統合整備は「3年連続定員に満たない高校でその後も改善の見込みがないと認められるものは再編整備の対象」とする府立学校条例および、「2018年度までに府立高校、大阪市立高校あわせて7 校程度を募集停止」とする府教委の再編整備計画を根拠にしています。そして、今回の答申は府教委の再編整備計画に便乗したものです。   ♦教育の目的は経済界・産業界が求める人材の育成か? 答申は「大阪市が求める人物像 〜本市普通科系高等学校が育てる人物像」として、内閣府や経済産業省からの提言を羅列し、「『基礎学力』『専門知識』をうまく活用していくための『社会人基礎力』を意識的に育成していくことが今まで以上に重要となり、『他者と協働しながら価値の創造に挑み、未来を切り開いていく力を身につけた社会・経済の変化に伴うニーズに対応できる人材』がより一層もめられるといえる」としています。 また、「学校教育に対しては、子どもたちに未来の創り手となるために必要な資質・能力等を確実に備えさせることが求められている」としています。 この文言と中教審答申を合わせて考えると、「資質・能力等」とは10年から20年先の知識基盤産業社会を支える労働力に求められるものであり、すべての子どもたちに求められているものではありません。このことは引用されている『国際競争を勝ち抜くハイエンド人材と成長を支える基盤となる人材の双方の育成が必要とされ、……』という関西広域連号の提言に典型的に現れています。 改悪される前の1947年教育基本法には「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあります。答申の内容は、「教育の目的」から見ても大きく逸脱するものです。   ♦維新府・市政の政策は答申の足下を掘り崩す 答申は「大阪の成長戦略」や「市政運営の基本的な考え方」から「日本の成長をけん引する東西二極の一極として世界で存在感を発揮する都市」、「大阪・関西が持つ強みに磨きをかけて、……アジアの成長力を取り込み成長する副首都にふさわしい大阪を……」などの文言を「大阪がめざすべき将来像」として引用しています。 ここにある「東西二極の一極として世界で存在感を発揮する都市」と「副首都」とは同じものであり、特定の政党「大阪維新の会」の政策そのものです。2015年5月の住民投票で否決された「都構想」に「再挑戦」するためのものに他なりません。「大阪維新」がねらうのは「大阪市解体」であり、大阪市の高校教育を議論する前提が存在しなくなります。 同様のことは、答申の「3. 新しい普通科系高等学校  ⑴大阪市らしさの視点から」にも見られます。「また、大阪市が幼稚園から小学校・中学校・高等学校までの全ての校種を設置しているという利点を活かすという……」とあります。この利点を自ら突き崩す「幼稚園民営化」路線をすすめているのは大阪市政=維新市政です。まさに足下をすくわれるとはこのことだと言えます。同じ項の「⑵大学との接続・連携の視点から」にも、同様のことが言えます。ここでの「大学」には公立の総合大学として、まさに天下に誇れる大阪市立大学は入っていないのでしょうか。   ♦無理矢理こじつけた3校〈西・南・扇町総合〉の統廃合 答申の冒頭にある「設置校数の総数減」と「校舎・校地の狭隘問題が喫緊の課題として浮上」に無理矢理こじつけるために、「英語力とICT活用能力」というキーワードを用いています。しかし、統廃合の対象となる3校は「英語力とICT 活用能力」でひとくくりにするにはどう考えても無理があります。南の国語科、西の流通経済科、扇町総合の大阪文化系列・環境科学系列・国際観光系列・会計ビジネス系列など、これらの学科や系列を挙げるだけでも無理矢理にこじつけたことが明白です。   ♦最後に 新しい普通科系高等学校の学級規模が6〜8学級になると予想される記述があります。西・南・扇町総合を統廃合すると、15 学級減になり、国際バカロレアが4学級ということなので、3校の統廃合により3〜5学級の減となり、120名から200名の中学生の進路を奪うことになります。学ぶ権利の侵害そのものであり、断じて認めるわけにはいきません。 さらに、3校の関係者に「統廃合を納得」してもらうために、「普通科系高等学校の雄」とか「国際バカロレアに匹敵する魅力を持つ」などの文言を散りばめていますが、戦前からの伝統のある学校の関係者からすれば「絵空事」にしか聞こえないと言えます。 審議会の内容はHPに公開されていますが、市教委高校教育課が作成した文書を「答申らしきものに仕上げる」ための論議に過ぎないと言えます。それ故、4回8時間という僅かな時間で結論に至るわけです。 具体的な統合再編の日程は、教育委員会に「丸投げ」された格好になっています。市教委高校教育課は3校の名前が翌日の新聞紙上に掲載されたことで、生徒や保護者および学校関係者への影響を推し量るべきです。 市高教は再編統合に反対するとともに、必要以上に予算がかけられる国際バカロレア認定コースを持つ中・高一貫校の設置にも反対をします。そうした予算を現在の市立高校の予算に回すべきです。   2017 年2月7日 大阪市立高等学校教職員組合