ホリデイ・トレッキング・クラブ

大阪市教育委員会会議決定(2018.10.2)に対する見解

再編整備計画の白紙撤回を強く求める

 
◆はじめに
 去る10月2日、第21回大阪市教育委員会会議が開催され、「普通科系高等学校の再編整備について」とする議案が決定されました。決定された内容は①設置学科は「教育文理学科(仮称)」、②設置理念は「高い志を持ち、様々な立場で教育に取組む人材の育成」「『チーム学校』を支える教育コミュニティの醸成」というものです。
 そして設置されるコースとその理念は次の3つを考えているようです。
(1)教職教育コース(仮称)
・豊かな人間性と教育に関する専門知識を身につけ、将来、教育現場で実践的指導力を発揮し、即戦力として活躍できる人材の育成
(2)国際文化コース(仮称)
・国際的な視野と豊かな教養を身につけ、グローバルな視点から様々な課題に対応できる人材の育成
(3)理数情報コース(仮称)
・自然科学・情報に関する専門知識を身につけ、研究的な視点から様々な課題に対応できる人材の育成
 
  これらの学科やコースを設置する理由として書いてあるのが次のような文言です。
 「大阪の発展を持続可能なものにするためには、本市高等学校の卒業者が教育に携わる人材となって活躍し、さらに次代を担う人材を育成するという好循環を生み出さねばならない。このことから、新普通科系高等学校では『教育』を柱に高大接続・連携による7年間を見据えた教育を行うことにより、教員をはじめグローバルな視点から教育にかかわる
様々な課題に対応できる人材を育成する。」
 
◆高教審答申の内容を矮小化
  まず第一に疑義が生じるのは、普通科系の高等学校を作るのではなかったのか、ということです。高教審答申(2017.1.23)では「普通科系高等学校の雄」とか「国際バカロレアに匹敵する魅力を持つ」などと述べていました。高校生の段階から身につける「教育」に関する専門知識とは何なのでしょうか。現場実習も考えているような「イメージ(案)」が描かれています。高校生が現場実習に行くようなことを本当にイメージしているのでしょうか。
  第二は、普通科系高等学校を新しく設置するとしていたのに、統廃合の対象となる3校の教職員には「専門学科を設置する学校」と説明し、答申内容を自ら否定しているのです。
 第三は、「国際バカロレアに匹敵する魅力を持つ」としていたにもかかわらず、扇町総合高校校地にほとんどお金をかけずに、新しい学校を設置しようとしていることです。
 「国際バカロレア」となる水都国際中学・高等学校に60億もの予算をつぎ込むことを考えると「匹敵する魅力」は持ちようがありません。
  第四に、「高大接続」を言うのであれば大学の数を減らすのは根本的な矛盾を起こします。維新府市政がやろうとしている府立大学と市立大学の統合計画は「二重行政」という「維新」の看板政策が発信源です。こうしたことを一方でやろうとしておいて、「高大接続」を言うのは、だれが見てもおかしな方向でしかありません。
 
◆現在の教育現場とあまりに乖離した設置理念
  教育委員は現在の教育現場をどのように認識しているのでしょうか。この内容をほとんど議論らしい議論もせずに決定してしまうのは、教育現場に対する認識があまりにも薄っぺらいものとしか言いようがありません。
 小中学校では児童生徒がテスト漬けと言われる状況になっています。それに拍車をかけるように、吉村市長と大森特別顧問の「教育破壊タッグ」が新たな人事評価制度を押し付けようとしています。
 高校現場では「道理なき再編統廃合」を押し付ける一方、工業高校を中心として定員割れとそれに伴う定数減で、教育困難な課題が山積する状況になっています。そして突然の「府立移管」(吉村市長8月30日)の話です。大阪市として高等学校教育をどのように考えているのか、見識を疑わざるを得ません。
 先の小中学校の管理職や教職員に押し付けようとする新たな人事評価制度も、高校現場でどのように具体化しようとしているのか、全く不明です。
 そして何よりも問題なのは、大阪市の教員あるいは教職志望者が大阪市から逃げ出していることです。政令市で全国最低の初任給、今年度から導入された「主務教諭」制度により、37歳を超えて講師をしていても採用されたときに前歴加算されないこと、税源移譲による給料表の改編で府下の教員と比べて退職金が130万円は少なくなること、などの事実を知れば大阪市の教員を希望する人はますます減っていくことは目に見えています。
 仮に、新しい学校が決定されたような理念のもとにできたとしても「好循環」は生み出されるどころか、他府県の教員希望者を卒業させることにしかなりません。
 
◆2年間だけの募集学科は伝統と実績を破壊するためのアリバイづくり
  今回の教育委員会会議では「再編整備に係る対象3校の2020・2021年度入学者選抜における募集学科・学級数」もあわせて決定されました。
 西高校では既存の3学科を募集停止して新たに「教育情報科」を2年間だけ募集します。しかし議案にはこの「教育情報科」が「情報科学科」を引き継ぐような書き方をしています。海外の高校と姉妹校提携をしている「英語科」や商業高校の伝統を受け継いでいる「流通経済科」は募集停止となります。
 南高校では新たに「英語探究科」なるものを2年間だけ募集し、これが「英語科」の延長のように見せかけ、伝統と実績を作ってきた「国語科」は募集停止となります。
 扇町総合高校では現在の5学級募集を2学級募集にし、総合学科として6系列の展開をしている課程のどれを残していくのか、一切書かれていません。
 今回、再編整備の対象として決定された西高校(1921年、西区商業学校として開校)、南高校(1937年、南高等女学校として開校)、扇町総合高校(1923年、扇町商業学校として開校)はいずれも創立80年を超える伝統と実績のある学校です。これまでに多くの卒業生を送り出し、地域に根ざして社会に貢献してきた高校です。これらの伝統と実績を破壊し、まるで「アリバイ」のように2年間だけ募集する学科を作るのは、断じて許されるものではありません。
 
◆最後に
 市高教はこれまで、2017年2月7日に「大阪市高等学校教育審議会答申(2017.1.23)批判」、2017年7月25日に「大阪市教育委員会会議決定(2017.7.14)に対する見解」を公表し、何の道理もない今回の再編整備計画の白紙撤回を求めてきました。
  今回の教育委員会会議決定も、高教審答申の内容を矮小化し、3校の伝統と実績を破壊する「アリバイ作り」など、当該3校の同窓会も受け入れられない問題点ばかりです。
 改めて、再編整備計画の白紙撤回を強く求めるものです。
  そして、いま大阪市教育委員会がやるべきことは「吉村・大森の教育破壊タッグ」の言われるままに、人事評価制度に血道を上げるのではなく、本来の教育条件整備に一から取り組むことです。
 
2018年10月9日 大阪市立高等学校教職員組合